屋台の造り
岩船のおしゃぎりは、二層二輪造りの大屋台です。堆朱・堆黒の塗りがほどこされ、金箔を押した彫刻が豪華さを競い合います。屋台は「一階部分」「二階部分」「屋根」の三層からなり、それぞれに固有の名称と意匠があります。
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お囃子台
一階部分。四方に唐破風(からはふ)のひさしがめぐらされます。乗り子の子供たちがお囃子を奏でる場所です。
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飾り台(上台)
二階部分。町の誇りである飾り物を乗せます。大黒天、恵比寿、武内宿禰など、各町にゆかりの神仏や吉祥物が据えられます。
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雨障子(屋根)
「雨障子」と呼ばれる屋根がかかります。岸見寺のおしゃぎりだけは、お船様の上に乗るため雨障子をかけません。
巡行の順序について
巡行の順序は決まっており、1番目が岸見寺、2番目が地蔵町、その後は上岩船(上大町・上町・上浜町・惣新町)と下岩船(下大町・下浜町)が一年おきに順番を交替し、最後尾が横新町となります。ここでは上岩船先番として九つの町内をご紹介します。
岸見寺
| 飾り物 | お船様(明神丸) |
|---|---|
| 見送り | 波 |
| 曳き手 | 岸若 |
| 法被の印 | 左三巴 |
行列の先頭を行く岸見寺のおしゃぎりは、曳き手「岸若」が曳きます。法被の印は「左三巴」。石船神社の紋は「右三巴」ですが、これは石船神社にはばかって左右を変えたとの説もあります。代表は「頭取」を名乗ります。
つい近年まで、漁師以外は頭取になれなかったほど生粋の漁師町です。飾り物は祭りのシンボル「お船様」、見送りは「波」。漁師町らしく、鯛をはじめとする魚の彫刻が多く見られる屋台です。
雨障子をかけない唯一のおしゃぎりで、お船様の上に幣束と帆柱を立て、吹流しと「明神丸」の旗が風にはためきます。
地蔵町
| 飾り物 | お神酒錫 |
|---|---|
| 見送り | 緞帳 |
| 曳き手 | 地若 |
| 法被の印 | 車の紋 |
岸見寺の隣に位置する戸数五十足らずの小さな町で、屋台の造りは一番簡素です。曳き手は「地若」、代表は「頭取」、法被の印はおしゃぎりの車輪を形どった「車」の紋です。
飾り物は「諏訪大明神」を表わす「お神酒錫(おみきすず)」。石川をはさんで対岸に「諏訪神社」が祀られ、漁師たちの信仰を集めています。見送りは、内側が紺地に「諏訪大明神」の文字、外側が緋色の地に「車」の紋を刺繍した美しい緞帳です。
上大町
| 飾り物 | 大黒天 |
|---|---|
| 見送り | 鶴と亀 |
| 曳き手 | 大若 |
| 法被の印 | 打ち出の小槌 |
下岩船先番では五番目となります。飾り物は「大黒天」、見送りは「鶴と亀」。
近年、修理や塗り直しが進む岩船のおしゃぎりの中で、古いまま残されている屋台です。龍や鳳凰の重厚な彫刻の素晴らしさは誰の目にも明らかで、乗り子は揃いの裃(かみしも)を着ます。これは上大町独自のもので、揃いの裃姿はこの町の誇りです。
曳き手は「大若」、代表は「会長」、法被の印は大黒天にちなんで「打ち出の小槌」。上大町と惣新町には、おしゃぎりの他に「笠鉾」も残されており、祭礼の行列に花を添えます。
上町
| 飾り物 | お神酒錫 |
|---|---|
| 見送り | 鷹と龍 |
| 曳き手 | 一番組 |
| 法被の印 | 鷹 |
下岩船先番では六番目です。古いことわざに「見ろば上町、聞こば新町」と讃えられます。
明治の時代に先代のおしゃぎりが焼失しており、現行屋台は細部の彫刻に手の込んだものが多いのが特色です。
飾り物は、町内に祀られる「住吉神社」を表わす「お神酒錫」、見送りは「鷹と龍」。上町の「通り囃子」は、たおやかな調べの佳曲です。曳き手は「一番組」、代表は「組長」、法被の印には見送りの「鷹」が描かれています。
上浜町
| 飾り物 | 武内宿禰 |
|---|---|
| 見送り | 宝珠に双龍 |
| 曳き手 | 屠龍会 |
| 法被の印 | 烏帽子に軍配 |
下岩船先番では七番目です。数々の豪華な彫刻が眩しい上台に乗る飾り物は、神功皇后の三韓征伐のおり皇后をお助けし武功を上げられたという伝説の武神「武内宿禰(たけのうちのすくね)」。見送りは「宝珠に双龍」です。
上台の桐の葉や、腰板の蘇鉄(そてつ)の彫刻も特徴的で興味深く、お囃子は「通り」「帰り」ともに半音を多用した独特な旋律です。曳き手は「屠龍会(とりゅうかい)」、代表は「会長」、法被の印は「烏帽子(えぼし)に軍配」。
惣新町
| 飾り物 | 花笠 |
|---|---|
| 見送り | 鯉の滝登り |
| 曳き手 | 惣若 |
| 法被の印 | 桜 |
下岩船先番では八番目。中新町・縦新町・新田町の三町から成ります。
曳き手は「惣若」、代表者は「組長」。法被の印は「桜」の紋。
飾り物は「花笠」、見送りは「鯉の滝登り」。傑作が揃う見送りの中でも代表的な存在として一目置かれています。
「聞こば新町」と言われるように、「通り」「帰り」ともに明るい中にも哀愁の漂う名曲です。とくに、ご祝儀の上がった家で奏され、そのまま「通り」へと吹きつながれる「もみだし」は、岩船の祭り最も美しい見どころのひとつとなっています。
下大町
| 飾り物 | 福禄寿 |
|---|---|
| 見送り | 二見ヶ浦の日の出と海老波 |
| 曳き手 | 篤信会 |
| 法被の印 | い |
下岩船先番では三番目です。曳き手は「篤信会」、代表は「会長」、法被の印はかつての火消しの流れを汲む「い」の文字。
飾り物は七福神の一つ「福禄寿(ふくろくじゅ)」。長い頭をした仙人のような人形を、町の人は親しみを込めて「外法様(げほうさま)」と呼びます。見送りは「二見ヶ浦の日の出と海老」で、名勝を題材に中央に大きな伊勢海老が輝きます。上台正面の龍の彫刻も見事です。
下浜町
| 飾り物 | 恵比寿様 |
|---|---|
| 見送り | 雲と麒麟 |
| 曳き手 | 浜若 |
| 法被の印 | 蔓柏 |
下岩船先番では四番目。岩船で最も古い、1801年製作のおしゃぎりがここに伝わります。
飾り物は「恵比寿様」。お顔もにこやかに、笹の竿をかざし大鯛を釣り上げる姿は、飾り物のどれと比べても最も見事とされます。見送りは「雲と麒麟」。
曳き手は「浜若」、代表は「会長」、法被の印は「蔓柏」の紋です。下浜町にも「もみだし」がありますが、こちらは笛の低音を多用した難しい節回しで、玄人好みの名曲と言えます。
横新町
| 飾り物 | 御神馬(白駒) |
|---|---|
| 見送り | 雲棚に熨斗鮑 |
| 曳き手 | 誠友会 |
| 法被の印 | 八咫鏡に右三巴 |
八番目のおしゃぎりが神社を出ると、玉槍とお御輿がお旅所を立ち、行列に加わります。神官や氏子役員がこれに続きます。町の人が俗に「白駒(しろこま)」と呼ぶ「御神馬(ごしんめ)」を飾り物に戴く横新町は、常に最後尾を進みます。
昭和62年に新調されたおしゃぎりは、塗りの入らない白木の屋台ですが、上台には手の込んだ宝尽くしの彫刻がほどこされています。曳き手は「誠友会」、代表は「会長」、法被の印は「八咫鏡(やたのかがみ)に右三巴」の紋。
昭和40年代まで、このおしゃぎりの後には、背に金の御幣を立てた本物の馬が何頭もつき従っていました。農業の機械化が進み馬を飼う農家が消えた今、そんなのどかな光景は見られなくなっています。
